心眼
家に帰った緋影は写真を見つめていた。亡き母と一緒に映っている幼い自分と父の写真。
父―誠一の物は写真から日記まで全て捨てたが、母と一緒に映っていたこの写真だけはどうしても捨てられなかった。
「……親父」
「いいかい、緋影。よく見ているんだよ」
誠一は眼鏡を胸のポケットに収め、懐から取り出したナイフを走らせた。
「うわあぁぁっ!すごいっ!」
どうすればこんな事が可能なのか。ナイフを走らせると大岩はどういうことか砂塵になってしまった。
「僕もやる、僕もやるっ!」
興奮気味に叫びながら、誠一からナイフを受け取ろうとぴょんぴょん飛び跳ねている。しかし彼は眼鏡を掛け、ナイフをしまってから首を悲しそうに横に振った。
「いいかい、緋影。父さんはね、普通じゃないんだ」
「ふつうじゃない?」
腰を落とし、幼い緋影の肩に手を置いて頷く。
「父さんには人の『心の色』が見える」
俯く父の顔は憂いに覆われていた。
「そして、その『色』に混じって、人間を、動物を、岩などの物質ですらも……ありとあらゆる『心』を消滅……破壊出来る『歪み』と『罅』が見える」
かぶりを振りながら父は話す。
「この力は呪われた力だ……この力でたくさんの人を……不幸にし、果てには殺してしまった……」
緋影はなんと言えばよいのかわからない。人を傷付ける事はよくないことだと両親からはきつく言われていたが、誠一の沈痛な表情を見ていると、それを『いけないこと』だとは言えなかったからだ。
「この力を……『心眼』を振るう度に、使った者の寿命、正気は失われていく」