封印
緋影は考え込んだ表情で道を歩いていた。
(……あれは……小川は一体何者なんだ?)
人間なのか?それとも何かの新たな知的生命体なのか?
一つ、確かな事がある。それは、彼女が危険極まりない存在だということだ。
外見は普通の人間なのに、中身がまるで違う。
対峙した時の彼女の瞳には狂気が渦を巻いていた。人を殺すことに快楽を見い出しているかの如く。
……狂った時の自分のような怪物が、他の人間に紛れて生活している……
……止めなければ……
……しかし……
……あの時は自分も狂ってしまっていたから、何とか闘えたのだ。
怖い。ただ怖い。体に震えがくる。本能的で、絶対的、純粋な恐怖。
あれだけの深手を負わせたのに、死なない化け物。どう考えても分が悪すぎる。
だが、葵は、大竹は自分が『いざ』という時には逃げない人間だと言っていた。
(……くそっ!何が『いざ』という時には逃げない、だっ!)
あの小川の事を考えるとぶるぶると震えがくる。情けない。
……これでは……こんな事では……
「……封印は解けた様だな」
思考と恐怖の狭間にいる目の前に、あの白マントが音も無く佇んでいた。相変わらず全身を筒のような白いマントで覆っている。
「記憶も全て戻ったか?」
「…………」
問い掛けにも、緋影は険しい表情で白マントを睨み付けるだけだ。
「……まあ、これからどうするかはお前次第だ」
白マントはそれだけを言うと空間に溶け込むように姿を消した。