人間ではない
(……馬鹿なっ!俺と大竹が先輩に会ったのが大体八時。それから三十分後に小川と会って……俺はあいつの左肩を切り落としたんだぞっ!一時間半を生きていられる訳がないっ!)
あの時の自分は激しい頭痛と取り戻した記憶のせいでろくに考えられなかったが、そもそもあの重傷で動ける訳が無いのだ。だが彼女はあれだけの重傷にも関わらず人間とは思えない速度で見事に逃亡している。
矛盾する自らの思考に混乱する。
それともこの事件は、小川とは関係の無い事なのか?
「被害者の遺体はバラバラにされており、頭蓋は切開されて脳が持ち去られているようです。とても人間の力で行える犯行ではないと……」
……人間の力で行えない犯行。ふいにあの白マントの言葉を思い出す。
『……君の相手は人間ではない……君の常識を超えた怪物だ……』
怪物?人間ではない?
……馬鹿なっ!
しかし、小川が人間を凌駕した驚異的な生命体であることは疑いようが無い。
人間であれば、あれほどの戦闘力を、生命力を持てるわけがない。
思考する緋影に葵の言葉は届いてはいなかった。