被害者
「……先輩」
「何ですか?早く寝ましょう。明日も学校がありますし」
「……その……ありがと……俺の罪はどうやっても消えないだろうけど……出来る限りの事をしてみようと思う。あのまま雨に打たれていたら、それすらも出来ないまま死んでいたかもしれない……」
何も出来ずに死ぬ事は許されない。それこそ母と父に、たった今殺してしまった小川美奈に顔向けできない。
アパートの薄い闇の中、罪にまみれても、精一杯生きようという決心を彼は固めた。
「おはようございます、深山君」
ベッドの上からぼんやりと時計を探す。
しかし、時計を見つけるよりも先に放送されていたテレビの時刻表に目が行った。
まだ六時を回ったばかりだ。
「深山君、まだ寝ていてもいいんですよ?学校は八時半からですし、ご飯は私がつくりますから」
「いや。アパートに戻って学校に行く準備もしなければいけないし。朝食は遠慮させて貰います」
もっとも、学校に行けるのは今日が最後になるだろう。恐らく、今日にも小川美奈の死体が発見されるはずだ。それまではせめて普通の生活をして心の整理をしよう。自首するのはそれからでも遅くはあるまい。
「たった今入ってきたニュースです。今日未明、一人の女性の死体が発見されました」
緋影は考えを止めて、ニュースに耳を傾ける。
自分に殺される被害者もこれで最後のはずだ。
「被害者はOO高校の女子生徒XXさんで、死亡推定時刻は昨夜の十時頃のようです」
(……小川じゃない?!)
「そんな馬鹿なっ!」
否定の叫びをあげると同時にテレビに駆け寄る。
「ど、どうしたんですか、深山君」
葵は緋影の大声に思わずびっくりしてしまう。
しかし、緋影は彼女の声には耳を傾けず、ただ映像を凝視している。