狂える刃

卑賤

卑賤

「そんな薄汚い人が、人の前で自分の悩みを打ち明けるはずがありませんよ」

瞳を見つめながら微笑む彼女に何と言っていいのかわからない。

……わからない。どうして葵や大竹はそんな事が言えるのか。

「まあ、確かに深山君は良い人ではありますが、相当疑り深い人でもあるようですね。でも他の疑心暗鬼の人とはちょっと違うと私は思いますよ」

「……どう、違うんですか?」

自分はどう考えたって疑り深い奴だ。何がどう違うと言うのだろうか?

「はい。それはですね、深山君が疑う相手は決まって自分自身だという事です。深山君は自分に自信が持てないだけなんだと、私は思いますよ」

葵は柔らかな微笑みを浮かべ、布団の中から緋影に顔を向けた。

「それにですね、どんなに凄い人だって、人を疑わない、恨まない、妬まない人なんていませんよ。私だって、疑ったり、恨んだり、妬む事は当然ありますし。知っていますか?あのキリストだって処刑される寸前に、『神よ、何故に私をお見捨てになるのか』と言った位ですから。深山君は気にし過ぎなんですよ。自分に自信を持って、もっと自分を信用してあげて下さい」

葵はふざけてキリストの口真似をすると、恥ずかしそうに布団を被ってしまった。