狂える刃

卑怯者

卑怯者

緋影は眼鏡をすぐに掛けなおした。彼女の心を覗き見るという行為がとても汚らわしいことだと思い直したことが一つ。そして、彼女の闇の罪悪感を見ていると、吐き気を催してきたからだ。

「先輩の言っている事はよくわからないけど……俺はそんな立派な人間じゃないよ」

「自信を持って下さい。自覚していないでしょうけど、深山君はすごい人です」

彼女の口調はいつも通りに明るいものに戻っている。

「昨日、深山君にお話を聞かせて貰いましたが、あんなひどい体験をしていながら、深山君はすごく真っ直ぐです。全然曲がっていません」

「……それは先輩の買い被りだよ……俺はこれ以上無い、という位屈折している」

しかもその原因が自分にありながら、父親のせいにして生きてきた。

とんでもない卑怯者だ。

だが、葵は首を振る。

「そんな事ないですよ。そうやって悩んで、苦しんで生きてきて、それでも人を信じている、というのは凄い事ですよ」

「……そんな事はない。俺は人が信用できない、薄汚い人間だ」

葵は言い切ってくれるが、これが自分に自信の持てない素直な心情だ。