正真正銘
……なんだろう……
……視界がやけに暗い……
「ふふ、お目覚め?深山君?」
この声が誰のものかまで聞き分けられる聴力は、今の緋影にはない。
「一昨日は随分お世話になったわ」
……何も考えられない……
一昨日、何があったのかまるで思い出せない。そいつはくすくす笑いながら、
「まあ分かる訳がないか。今の深山君は辛うじて虫の息で生きている、といった状態だからね」
瞳は一人の少女を見つめているが、薄暗い闇の中それが誰かまではわからない。
「さて、あとは深山君の『心眼』の力を手に入れるだけね。奴からはもう知識は頂いたし、すぐに『不死』の力も私のものになる」
ドスンッ!
何かが壁に突き刺さったような音が聞こえた。
「……ヤ……ミ……ン……」
掠れたような小さな声が耳に届く。
「しぶといわね」
いらつくように舌打ちした後に。
ドスドスッ!
続け様に壁に何かが突き刺さる。
「ヒぁ!」
誰かの悲鳴。この声は誰の……
「全く……心臓引きずり出して、脳を潰しても生き返るんだから……正真正銘の化け物ね。でも深山君が人質に使えてよかったわ」
「……深山……クン……起きて……深山君……」
この声は……自分の心が、奈落の底に落とされそうになった時に助けてくれた人のものだ。名前は……
「深山君……深山……」
「本当にしつこいわね。声を掛けて起きる怪我じゃないでしょ」
いらつくように何かを壁に突き刺す。緋影の瞳に僅かな光りが灯る。
「…………」
瞳が見たもの。
それは十数本の剣によって串刺しにされた葵の姿。彼女は粘性の液体に体の全身が取り込まれており、完全に動きを封じられている。