止める
「深山君」
問い掛けに足を止めて、首だけを葵に向ける。
「どうして、この事件に関わろうとしているんですか」
射抜くような眼差しを緋影に向ける。
「……止めなきゃ、いけないからさ」
それだけ。
彼女を、これ以上苦しめたくはない。
彼女の手を、これ以上血に染めたくない。
……殺して楽にするだなんて、止めるだなんて、思い込みもいいところだな……
自虐的に微笑むと、緋影は葵に背を向けた。
緋影は準備を全て終えて、和室に向かっていた。
(十分程早いが、別にいいよな)
和室の戸の前で一回深呼吸をし、戸を開ける。
「せんぱ……」
いきなり闇が襲ってきた。それが何かまでは緋影にはわからない。
緋影にわかった事は、この一撃が自分にとって致命傷になる、という事だけだった。