狂える刃

理由

理由

彼女は呆気にとられたように口をまほっ、と開けている。

「……どうしたんです、先輩?その間抜け面は?」

「全く……どれだけ大変な事に首を突っ込んでいるのかわかっているんですか?!」

葵は表情を引き締め、ややいらついたように叫ぶ。

「ああ。どれだけ深刻な事態かはよくわかっている。あの時、俺が最初に彼女と接触した時のことは知っているだろう?放っておけば、大竹は殺されるかもしれない。もちろん俺も」

「ですから、彼女の始末は私がやります」

「これを見てもそんな事が言えるかい?」

そう言って眼鏡を外した。壁にある『歪み』をナイフで切りつける。音も無く壁に大きな亀裂が走る。同時に、何でもないことのように眼鏡を掛け直す。

物質の中にすらも、その『心』を見い出し、緋影は破壊する事が出来る。

封印は解除されてしまったが、ほんの少しでも眼鏡を外すと正気を失う、という訳ではないようだ。自身の体調もあるだろうが、一、二分なら影響はなさそうだ。

亀裂の走った壁を見た葵は、

「仕方が無いですね。無視しても深山君の性格上、一人で勝手にやっちゃうことは充分に考えられますし……協力してもらいます」

溜息をつきながら助力を求めた。

「ありがとう。出来る限り早くケリをつけたい。何か当てはないんですか?」

「当ては無いですが……これからの行動方針もありますんで、放課後、八時頃に和室に来て下さい。ちゃんと準備はしてきて下さいよ。頼りにしていますから」

「足を引っ張らないように頑張りますよ」

緋影は不敵な表情で微笑む。

そして葵に背を向け歩き出す。