YES
弱々しい月光ではっきりとは見えないし眼鏡もかけてはいないが、それは間違いなく緋影の先輩、葵皆海のものだ。
「み、深山君……どうして……」
呆然とする二人。
だがこの状況の中、たった一人だけ冷静な人物がいた。
なんとあの白マントはどんなトリックを使っているのか、宙に浮かんでいたのだ。
「…………」
白マントは無言で二人を見下ろしている。
「くっ!」
緋影を庇うように葵は前にでて、黒剣を構える。
だが、白マントはそのまま夜の闇に溶け込む様に消えていく。
彼女は黒剣を下ろし、そのさまを悔しそうに見届けている。
「先輩。これは一体どういう事なんだ?」
「……もう、ごまかしようがありませんね」
葵はいつもの彼女とは違う様子で、緋影の方は向かずに無機質な声で呟いた。
「説明してくれ。まず先輩はなんでこんな事をしている?あの白マントは何者なんだ?それから……」
「疑問はたくさんあるでしょうけど、深山君に教えてもわかる範囲の事柄はほとんどありません」
彼女はきっぱりと説明の拒絶とも思える言葉を言い放った。
「なら、力づくでも教えて貰う」
葵の瞳が険しく見開かれる。蒼い眼光を緋影は真っ向から受け止める。
しばらくそうして対峙しているとふう、と溜息をつき、
「……わかりました。説明しましょう」
根負けしたように葵は夜空を仰いで呟いた。