サイレントブルー
「どうもこうもない。そのままの意味だよ、サイレント・ブルー沈黙を守る蒼」
白マントのつかみどころのない声が聞こえてくる。一体何を話しているのだろう。
「……なら腕づくでも吐いてもらいましょう」
「……どうしてもやるというのであれば、君相手に容赦はできんな」
二人の間にちりちりとした殺気が漂う。先手を取ったのは『サイレント・ブルー』だった。濃紺のコートから数本の短刀を取り出し、目にも止まらぬ速度で矢のようにそれを投げ付ける。
白マントは投擲された短刀をかわそうともせずに左手をバッ!と広げた。
すると信じられない事に放たれた数本の短刀はあたかもガラスのように粉々に砕け散った。
その軌道上にいるブルーは自身の体を横に倒す。
直後、とんでもなく大きな音を緋影の耳は捉えた。
ブルーの後方にあった大木がまるで紙切れのようにすっぱりと切られている。大きな音は大木が倒れた音のようだ。一気に間合いを詰めた白マントは見えない何かを握っているかのような左手を、ブルーに振り下ろす。
ブルーはその一撃を黒剣で受け止める。
刹那、大気がほとばしった迸ったように周囲に衝撃波が走った。
「くっ!」
予期せぬ事態に緋影は思わず声をあげてしまった。声にサイレント・ブルーが反応する。
「見られたっ?!」
こちらを振り向くとブルーは地を這うような姿勢で、蛇が這い出るように緋影に接近してくる。
(しまったっ!)
眼鏡を外そうにも間に合わない。
何とかして致命傷だけはさけようと動き出したが、それよりも黒剣の輝きが緋影の首を捉える方が早い。
しかし、剣が首の肉に切り込まれる寸前でびたっ、と止まる。
月明りのもと、緋影は見た。その人物の顔を。
「せ、先輩?」