原因
心も、体も。
過去も、今も。
未来さえも、霞んで見える。
「……どうして、そうなっちまったんだ……」
言葉を紡いでいないと、理性が破壊されそうだ。思考することで、かろうじて心の感覚を保とうとしているのか。
「……よくわからない。二日前に、学校から帰る途中で、何かに襲われた。スライムみたいな、どろどろとした気持ち悪い液体。それに飲み込まれて……私の意識と体は取り込まれたみたい……あとはよく覚えてない」
急に胸を掻き毟るように彼女は苦しみだした。
ゴホッゴホッ、と咳き込み、青い粘着質の液体が口から吐き出される。
「小川……」
思わず足が前に進む。
「駄目っ!」
彼女の張り上げた声が、理性を再び動かした。
足がビタリと止まる。
「緋影君……夜は……出歩かないほうがいいよ……夜は、もう一人の自分を抑え込めないから」
それだけを言うと彼女は駆け出した。
人間とはかけ離れた、肉食獣のようなスピードで。
「小川っ!」
叫びはむなしく木々をざわめかせた。