狂える刃

捕食

捕食

彼女がどういう状態なのか、対峙しておぼろげながらやっとわかった。

彼女は、自分だ。

『心眼』に狂った時の、自分だ。

今は、かろうじて自らの意思で、何かの衝動を抑えているに過ぎない。彼女の『心』はどうしようもなく弱っている状態だ。今にも他の『何か』に『心』を乗っ取られそうだ。

しかし自分の意思がまだあるなら、何とか出来ないだろうか?

「こうやって緋影君が来なければ、もっとはやく狂えたのに……」

彼女は残念そうに呟く。

「狂えたなら、人を殺して悩む事もないだろうに……」

心底残念そうに呟く。

「小川、諦めるには、早すぎないか?」

望みを託すように眼差しを送る。

だが彼女は弱々しく首を横に振った。

「今日のニュース、見た?」

沈黙が、二人を包む。

「私は……この体はね」

深く、深く息を吸い込み、彼女は言った。

「人の脳を食べないと、生きていけないの」

…………

「私じゃない私が、人の脳を啜っているの」

…………

「仮に、私じゃない私の意志を、どうにか抑えられたとするよ?でも私、どうやって生きていけばいいの?」

……答えることが、できない……

「……だから、私は、もう、駄目」

哀しげに、儚げに、微笑む。

まるで蜃気楼のように彼女が揺れて見える。