罪
結局、緋影は葵の作った料理に箸をつけ、風呂にも入り、寝床についている。
(……どうしてこうなったんだ?)
終始葵のペースで事は運び、緋影は困惑しつつも彼女の優しさを甘受していた。
彼女は学校での生活や、緋影の日頃の食事情、大竹とどうやって知り合ったのか、等々を話題に出していつも通り話し掛けてくれた。ろくに答える事は出来なかったが、凍っていた感覚が少しずつではあるが、溶け出しているような気がした。
(……だが)
これからどうすればいいんだろう。
……わからない……
頭に手を回し、天井を眺める。
雨足はどんどん強くなっているようで、ざあざあと屋根を叩き付ける。
フローリングに敷かれた布団から声が発せられた。
「深山君、早く寝ないと明日も学校があるんですよ」
「先輩、まだ寝てなかったんすか?」
「……深山君。私も女の子なんですよ?深山君よりも先に眠る訳にいかないじゃないですか」
ちょっと照れが含まれているような声。
「先輩、やっぱり俺、台所で寝るよ」
一瞬の沈黙のあと気まずそうにベッドから体を動かそうとしたが、
「駄目です。深山君はもう風邪を引いているんですから、温かい所でゆっくりと寝て貰わないと。嫌な事はちゃっちゃと忘れてぐっすり眠ってください」
葵がそれを止める。そう言われて緋影の動きもぴたりと止まった。
脳裏に、苦しそうに胸を掻き毟る少女の姿が浮かんだ。
「深山君?」
その様子を不審に思った葵は声を掛けたが、
「……駄目だ……俺が犯した罪は取り返しのつかないものなんだよ、先輩……その上その罪まで忘れてしまったら……」
ぎりっ、と歯列のずれる音が聞こえた。